2018年10月18日

『卜部哲次郎・鐵心和尚集』

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『卜部哲次郎(辻潤ノ高弟)・鐵心和尚集(師僧ハ中村戒仙) 付 卜哲の追っかけ』
    卜部哲次郎著 大竹 功編著
    A5判/612頁  定価3500円+税  仮立舎

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   目次
    卜哲の追っかけ 1〜3
    卜部哲次郎・鐵心和尚の作品
    鐵心和尚詩鈔 (改訂版)
    卜部哲次郎・鐵心和尚の信書
    卜部哲次郎・鐵心和尚の年譜
    卜部哲次郎をめぐる時代社会と、周辺の人たち 
    卜哲の追っかけ 4〜10
    卜部哲次郎・鐵心和尚の参考文献リスト
    あとがきにかえて
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きょう著者の方から、このけっこうな本を寄贈していただきました。こちらはまったく忘れていたのですが、20年近く昔に虚無思想研究会の大月建氏を紹介したことを感謝されてのことのようでした。(※数年前に亡くなった大月氏については、このブログの2016年03月13日に記事があります)
さて、この記事を書くために「卜部哲次郎」をググったら、1番上に出てきたのが、あきれたことにわが三月書房の「虚無思想研究の在庫」のページでした。そのことだけでも彼が世間的にはほぼ無名の人物であることがわかるでしょう。辻潤の高弟と自任する卜部哲次郎については、辻潤関係の本などにちらほら出てくるほかは、著書も伝記もなく、ほとんどその生涯は不明でした。この本の著者の大竹氏はふとしたきっかけで今世紀の初めに「卜哲の追っかけ」を始められましたが、その精力的な探索の結果、従来不明だった生年月日、本籍、家系、経歴、僧歴等がかなり詳しく解明されました。最終学歴は不明のままですが神戸の高等商業(現神戸大学)かと想像されています。
卜部哲次郎は1900年生まれ、辻潤や吉行エイスケ、高橋新吉らダダ系、アナ系の人々と交友があり、昭和の初めに出家、臨済宗の禅僧・鐵心和尚となり愛媛の円通寺住職として1949年に没。遺族は80歳代の娘さんがご健在。
この本には大竹氏が現在までに入手されたすべての詩文と書簡類等が収録されていて、これらがおよそ400頁分。そして残りの200頁分が卜部についての探索記「卜哲の追っかけ」と、年譜、家系図、資料等です。大竹氏によれば鐵心は「飲んだくれのクソ坊主」だったそうですが、あの時代に自由に生きて、兵士にも囚人にもならずに過ごせたのだから、やや早死にとはいえまずは楽しい人生だったのではないでしょうか? なお、この本は地方小出版センター扱いにて10月22日発売とのこと。三月書房でも通販可能ですが、分厚いので送料が510円もかかりますから、なるべくご近所の書店で取り寄せてもらうことをおすすめします。発行部数はわずかと思いますのでお急ぎください。なお、発行所のサイトに著者による紹介記事があり、卜部哲次郎の全作品リストや肖像写真等を見ることができます。

この本の通販は三月書房のサイトの“「南天堂」関係者などの本の在庫”のページからメールでどうぞ。なお、寺島珠雄著「南天堂:松岡虎王麿の大正・昭和」に卜部哲次郎は数カ所登場しています。

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2018年10月01日

「やちまたの人 編集工房ノア著者追悼記続」

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「やちまたの人 編集工房ノア著者追悼記続」涸沢純平 
定価2000円+税 編集工房ノア

昨年秋に出た涸沢純平社主の「遅れ時計の詩人 編集工房ノア著者追悼記」はたいへんよく売れましたが、待望の続巻が刊行されました。この巻には、足立巻一、川崎彰彦、塔和子、杉山平一、鶴見俊輔、東秀三、三輪正道らへの追想などが収録されています。前巻に続いて巻末に附されているわりと詳細な略年史は2006年7月から2018年10月1日まで。数年後には追悼記の続々と略年史の続きを刊行していただきたいものです。なお、この巻の帯文は山田稔氏が書いておられますが、上記の書影をクリックして拡大していただくと読めるはずです。

「やちまたの人 編集工房ノア著者追悼記続」のほか編集工房ノアの本の通販は、三月書房のサイトの「編集工房ノアの本の在庫」のページからどうぞ。今なら「海鳴り30号」が残っています。

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2018年08月13日

「脈 98号 写真家 潮田登久子・島尾伸三」

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「脈 98号  写真家 潮田登久子・島尾伸三」比嘉加津夫・編集
 A5判/193頁 定価1300円+税 脈発行所

*目次
  特集  写真家 潮田登久子・島尾伸三
   潮田登久子  本の景色と私
   島尾伸三   思い出と注釈
   飯沢耕太郎  島尾伸三と潮田登久子の「写真的結婚」
   阿部日奈子  素性の知れたふたり
   鳥原 学   島尾伸三と潮田登久子の写真的生活
   加持ゆか   見えるものと見えないものを巡って
   大上真一   写真集『BIBLIOTHECA』(潮田登久子)について
   松岡良樹   本の景色と私たち
   仲里 効   季節風に吹かれ、カフカ的に
            ――島尾伸三の〈照片〉と〈雑文〉の曲率
   神林 優    グリル網
   倉石信乃   常在のVISTA―島尾伸三「生活」を見る/読む
   満留伸一郎  輪郭と光――島尾伸三の写真
   西蔵盛史子  伸三さんと登久子さん
   比嘉加津夫  凝羅儒的にふたりの写真家――島尾伸三と潮田登久子
  俳句 玄 子  老いの入り舞い
     仲本彩泉 カウントダウン
  詩  伊良波盛男  夜の川
     仲本 瑩   海嘯(3〜5)
     西銘イクワ  「永山則夫の罪と罰」を読んだ
  小説 東木武市   島の西郷どん(2)
     仲本 瑩   バラードの斧ひかりの檻(50〜52)
     杼該 至矢  密室(3)
     比嘉加津夫  マカテの馬琴論 平敷屋朝敏の謎(9)
  論考 村上一郎   村上一郎未発表日記と『試行』X
             ――1963(昭和38)年の日記[1](佐伯修 編・註)
     松岡祥男   特集「沖縄を生きた島成郎」を受けて
               吉本隆明さんのこと(18)
     青柳瑞穂   キーツとトムソンの「怠惰」な詩(前篇)
             怠けて生きたい私たち(15)
  編集後記
  表紙写真=「島尾敏雄の裏日記など」撮影・潮田登久子
  題字= 比嘉良治 本文カット= ヒガカツオ

潮田登久子・島尾伸三夫妻の特集号で、ご自分たちの写真作品とその注釈、そしてエッセイを寄稿されています。潮田氏の「本の景色と私」は2017年刊行の『本の景色 (SERIE BIBLIOTHECA)』と関係のあるらしきものですが、この本は高価な上に一般流通もしていないようなので仕入れかねていて、現物未見のためなんともわかりません。ちなみにこの写真集の版元はウシマオダとなっていますが、これはご夫妻の自家出版社のようです。娘のまほ氏を加えた3人のサイト「Ushimaoda」というのもあります。島尾伸三氏の「思い出と注釈」は伸三氏撮影による島尾敏雄とその家族の写真25点です。これらの写真はたぶん未公表だったのではないかと思いますが定かではありません。
「脈」次号の特集は「吉本隆明が尊敬した今氏乙治作品集(仮題)」で11月刊行予定
脈発行所の本の通販は三月書房のサイトの「脈発行所の本」のページからメールでどうぞ。「脈」と「myaku」のバックナンバーも少しあります。

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2018年07月31日

お盆休みのお知らせ

地べたの店は8月13日(月)〜15日(水)休みます

今春から月曜と火曜を定休にしたので、盆休みは水曜が増えるだけとなりました。今年はめずらしく出版業界の物流休止日と同じなので、ずれる年よりはゆっくり休めそうです。来年は定休日をもう一日増やしたいと考えていますが、もしもそうなると盆休みが実質的になしになってしまうので、4連休にするかもしれません。

  「ステキな奥さん ぶはっ」

3年前に出ていた本ですが最近読んだら、「新聞はキチョウ品」という4コマ漫画がものすごく面白かった。本編は「朝日新聞」に隔週連載の画文ですが、この漫画はたぶん単行本化にあたって追加されたものでしょう。伊藤理佐/吉田戦車家では新聞を一紙も購読していないので、月に2回送られてくる掲載紙がとてもキチョウだと。たとえば、ヤサイを包んだり、生ゴミをくるんだり、テンプラを揚げるとき敷いたり、こどもがおもちゃを工作したりと。うちも一昨年から新聞をとるのをやめましたが、古新聞がないといろいろ不便なので、お役所の広報紙とかリビング何たらとかいうフリーペーパーを大事に残しておいて使っています。しかし、それにしても、「ステキな奥さん ぶはっ」は朝日新聞出版の発行なのに、わざわざこんな漫画を追加するのは、ひょっとしたら出版子会社による新聞本社へのささやかなレジスタンスかもしれません。

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2018年07月24日

三月書房販売速報[128]発行のお知らせ


三月書房販売速報[128]
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2018/07/23[20-02-128]  (c)SISIDO,Tatuo   *転送歓迎*

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 128号
            ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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◎主な内容
[#00] 今年はいまだかって経験したことがない猛暑で、
[#01] 最近売れてるような気がする本
[#02] これから売れそうな気がする本
[#03] 短歌本の売上げ(TOP12)
[#04]<天に唾する>京都の書店のうわさ(その90)
    ○「三省堂書店京都駅店」が6月17日で閉店
[#05] 近ごろちょっとまずいことになったらしい出版社など
    ○ダイナミックセラーズが破綻。日本芸術出版が行方不明?ほか
[#06] etc.… 
    ○本の雑誌社の新刊『ニッポンの本屋』
    ○大阪屋のサイトの「ごんた堂」が消えた
    ○河出の『日本文学全集』が予定日を過ぎても完結しない

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河出が2014年秋に刊行を開始した『日本文学全集』全30巻がいまだに完結しない。最初の予定では2018年3月完結のはずだったが、あと2冊(源氏物語の中と下)を残して、2017年9月以降出ていない。それにしても、この出版業界の状況下で“現金一時払い特価”を設定した呑気さには少しあきれます。2014年以降に閉店した書店にて一時払いをしていたお客は、閉店以後も無事に配本を受け取れているのでしょうか?栗田、大洋社などの取次と取り引きしていた書店は無事に定期を新・大阪屋に移行できたのでしょうか?この問題については「出版ニュース」2002/09/中旬号に、寄稿したことがありますのでご参照ください。

「三月書房販売速報」のバックナンバーはこちらでお読み下さい。最新号は発行の1月後にアップします。定期購読のお申し込みは、同じページからメールにてお申し込みください。もちろん無料です。

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2018年07月16日

「黒のマガジン」第3号 特集・水木しげるとアメコミの世界 

152533522048391002180.jpg 「黒のマガジン」第3号 定価800円(税込)

10年以上前に創刊号を扱ったことのある「黒のマガジン」の第3号が突然入荷しました。第2号は扱った記憶がありませんが、8年ほど前に出ていたようです。この第3号の特集は“水木しげるとアメリカンコミックスの世界”。発行所のブログによると“水木マンガを開いては「このコマってどこかからパクったぽいよな」など他愛もない話を収録してはいましたが、十数年経ってこんな完璧な感じで証明、てか照合されるとは!いやーほんと大爆笑です。ただひたすら水木マンガの元ネタを引っ張りだしてるだけなのに、こんなに笑えるとは。他にも足立&藤本対談と、足立さんのコラム「鬼太郎の髪の毛針はアメリカ製か」は必見ですわ。”というようなものです。図版多数収録されてます。ほかに炭子部山貝と藤本和也の漫画も載ってます。それから、黒マガ増刊号「ミズキカメラ」上下巻、496頁という限定版の資料集も出ているそうですが、こちらはイベントでの直販のみとのことなので入荷予定はありません。8月には第4号「特集・水木しげると写真の世界」も出るそうです。こちらは入荷するかもしれません。詳しくは発行所のブログでお確かめください。
藤本和也さんのブログ(仮タイトル)
「黒のマガジン」のブログ
この雑誌の通販は通販は三月書房のサイトの“他店ではあまりみかけない本”の頁からメールでどうぞ。

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2018年07月02日

「ぽかん」7号

pokan07.BMP 「ぽかん」7号

 本文88頁/定価700円+税 編集・真治彩/発行・ぽかん編集室
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*目次
 ひょうそ ー「門司の幼少時代」(二) 山田稔
 大学ノートに万年筆で 片山令子
 私的、悼むことについて 株田和生
 最後の授業 岩阪恵子
 おばあちゃんからの便りと、最期の絵日記 郷田貴子
 文学者の映画エッセイをめぐって 高崎俊夫
 7四月に雪が降ることもある 福田 和美
 ぬいぐるみの鼠――忘れることに抗う 服部 滋
 書物の城塞   渡辺尚子
 湖魚の道が交わるところ 澤村潤一郎
 a poem as an amulet――片山 令子さんのこと 真治彩
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この号も前号同様おまけ冊子はついていません。山田 稔氏のは7頁分。たぶん次号以降も続くのでしょう。
「大学ノートに万年筆で」は3月に亡くなった片山令子さんの遺稿です。お亡くなりになっていたということは、この号の真治彩さんの記事で初めて知りました。少し不思議なのは、けっして無名ではなく著書も多い方なのに、ネットで検索しても訃報記事がみつからないことです。それどころかウィキペディアの項目すらないのはなぜなのでしょう。本人がSNSの類に手を出さなくとも、どうでもいいことまでアップされるのがネットなのに、よほどうまいこと避けておられたのでしょうか?
この本の通販は三月書房のサイトの“他店ではあまりみかけない本”の頁からどうぞ。「ぽかん」のバックナンバーは1号以外は揃っています。

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2018年05月26日

山田稔『こないだ』 本日入荷!

konaida.JPG 山田稔『こないだ』定価2000円+税 編集工房ノア

山田稔氏の新刊『こないだ』は、35篇の比較的短い文章をまとめた、エッセイ集あるいは雑文集とゆーよーなものです。初出の時期はばらばらで、1986年の「日本文学を読む会会報」から、今春出たばかりの「海鳴り30」まで、そして未発表が3篇です。量的に多いのは「週刊朝日」の読書欄掲載の書評で11篇。「海鳴り」のは24.27.28.29.30.の5篇。ほかは「VIKING」「ぽかん」「大和通信」…etc。上の写真ではわかりにくいかもしれませんが、装幀がこれまでのとまったく違って、カバーなし、表紙と背に書名と著者名を印刷した紙片が貼付されています。
この本の通販は、三月書房のサイトの「編集工房ノアの本」のページあるいは「山田稔の本」のページからメールでどうぞ。送料等140円。いまならご希望の方には「海鳴り 30」を同送可能です。

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2018年05月14日

「脈 97号 沖縄を生きた島成郎」

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「脈 97号 沖縄を生きた島成郎」比嘉加津夫・編集
 A5判/213頁 定価1300円+税 脈発行所

*目次
  特集 沖縄を生きた島成郎
    河谷史夫  島成郎という人
    内田聖子  佐藤幹夫『評伝 島成郎』を読む
    齋藤愼爾  島成郎と吉本隆明――〈6.15〉の思想をめぐって
    松本輝夫  島成郎と谷川雁――終生「革命」の本義に生きた
           二人をめぐって
    坂口 博  生田浩二と島成郎――そして谷川雁「世界をよこせ」
    今野哲男  沖縄のヤスリ
    川満信一  対談「沖縄の精神医療をどう考えるか」/
           島成郎について
    村瀬 学  風を結ぶ――固有名の「ブント」から、
           愛称の「ブント・結び」へ
    仲里 効  窓を開ければ――〈非〉と〈反〉の果てまでも
    添田 馨  島成郎の〈沖縄〉――佐藤幹夫『評伝 島成郎』
           その生き方を継承してゆく意味について
    玉木一兵  島イズム三様の志
    比嘉加津夫 島成郎の決断
   書評 三上治 帰らざる1960代 『唐牛伝』から
   俳句 仲本彩泉  カウントダウン
   詩  仲本 瑩  海嘯(1〜2)
   小説 杼該 至矢 島の西郷どん
      仲本 瑩  バラードの斧ひかりの檻(48〜49)
      伊良波盛男 酋長
      比嘉加津夫 マカテの小説 平敷屋朝敏の謎(8)
      杼該 至矢 密室(2)
   論考 村上一郎  村上一郎の未発表日記と『試行』9
        ――1962(昭和37)年の日記(8) (佐伯修 編・註)
      松岡祥男  言葉の力を信じて 吉本隆明さんのこと(16)
      青柳瑞穂  ゆっくり生きる“詩”怠けて生きたい私たち(14)
      比嘉加津夫 極私的に佐野眞一を
   編集後記

q.jpg 佐藤幹夫『評伝 島成郎』
今年の三月に筑摩書房から刊行された佐藤幹夫氏の『評伝 島成郎』を承けて編集されたこの号の特集は、 「沖縄を生きた島成郎」。島成郎と川満信一対談は『新沖縄文学』66号(1985年)からの再録ですが、その他はすべて新稿です。

kiga45.BMP 『飢餓陣営45 島成郎総特集号』
昨夏には佐藤幹夫氏の個人編集誌「飢餓陣営」が島成郎総特集号を発行しています。こちらも合わせてお読み下さい。内容詳細は、三月書房のサイトの「飢餓陣営発行所の本」のページでごらんください。もちろん通販もしています。
「脈」次号の特集は「写真家・潮田登久子と島尾伸三(仮題)」で2018年8月20日刊行予定。
脈発行所の本の通販は三月書房のサイトの「脈発行所の本」のページからメールでどうぞ。「脈」と「myaku」のバックナンバーも少しあります。

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2018年05月10日

梶井基次郎『檸檬』の鎰屋の写真

kagiya.JPG 「鎰屋」1955年秋

この写真の中央は寺町二条西南角にあった「鎰屋(かぎや)」の建物を1955年に撮影したものです。あの梶井基次郎の「檸檬」(初出は大正13年)に出てくる「鎰屋」ですが、文学アルバム等では写真を見たことがないので、やや珍しいかもしれません。※註・画像をクリックすると拡大されるはず。
「また近所にある鎰屋の二階の硝子窓をすかして眺めた此の果物店の眺めほど、その時どきの私を興がらせたものは寺町の中でも稀だつた。」
当時の鎰屋は有名な和洋菓子店で二階が喫茶室になっていた(『京都文学散歩』京都新聞出版センター)そうなので、この写真の建物の二階の硝子窓などは、梶井の小説と合致しているように見えます。しかし問題なのは、この建物が「檸檬」の書かれた大正末年とはたして同一なのか、それとも後に建て直されたのかわからないことです。うちの商店街の長老に見てもらったら、間違いなく「鎰屋」だと断言されましたが、残念ながらこの方は昭和2年生まれなので、昭和の初めに建て替えた可能性についてはわかりませんでした。
「檸檬」当時の寺町通は今よりも狭く、おそらく現在の寺町通の二条以南と同じ幅だったはずで、しかも狭軌の市電が通っていました。この市電は河原町通に広軌の市電が敷設されたことにより、大正15年7月に廃線となりましたが、その後近い時期に拡幅工事があり、この「鎰屋」のあった寺町通西側の土地は、丸太町から二条まで、通りに面した数メートル程度を一率に接収されました。お隣の五色豆屋のおばあさん(明治生まれ。故人)に聞いた話では、木造建築は壊さずにコロで後ろに引っ張ったのだそうですが、「鎰屋」の建物の場合はちょと無理そうに見えますがどうなのでしょう。
この写真は寺町二条上ル東側から南西方向を撮影したもので、裏面のメモによると1955年10月とあります、撮影者は不明ですがおそらく三月書房の関係者でしょう。隣の学区の白山神社(麸屋町押小路)の御輿が写っていますが、ここの秋祭りは9月のはずなのに、なぜ10月撮影となっているのかは不明です。写真の現物は56mm×68mm位、印画紙の形状からヤシカの二眼レフかもと思いますがあてにはなりません。その小さな写真を安物のスキャナーで拡大処理しただけなのでいまいち鮮明ではありませんが、現物をルーペで見ると、「鎰屋」の二階の看板には「京都府労働図書館」と読めます。一階は雑貨店かなにかのような小売店だったようで、小学生のころにハモニカを買ったおぼろげな記憶があるのですがあいまいです。先の長老の話では「鎰屋」は元の建物を貸すか売るかして、自らは二条通を一軒西に入ったところの小店でしばらく営業を続けていたとのことです。
なお、「鎰屋」の斜め向い、寺町二条東南角にあった檸檬の果物店は2009年に閉店されました。この件についてはこのブログに記事があります。[梶井基次郎「檸檬」の果物屋が閉店(2009年01月28日)]
それから、「鎰屋」からの暖簾分けで「KaGiYa」という洋菓子と喫茶のお店が河原町荒神口にありましたが、昨春閉店されたそうです。
※註。上記写真は元版丸ごとではなく一部カットしてあります。

2018/05/13補記。「鎰屋」のマッチラベル。
マッチのレッテルに大正ロマンを求めて”というサイトに「鎰屋」のマッチラベルが5枚も紹介されています。説明によれば「大正末期から昭和初期の宣伝広告マッチラベル」とのことですが、そのデザインや「Confectioner.& Tea Parlor」とあることからみて、この当時は和菓子ではなく洋菓子が主だったのでしょう。

2018/05/13補記。昭和13年の「かぎや茶寮」のメニュー
“モダン周遊”というサイトに「昭和13年9月の鎰屋“季節 御菓子の栞”」が紹介されています。この栞には「御菓子司かぎや延秋」とあり、特製洋菓子としてマロン・グラッセ、カステーラ、シュークリーム、プッディング、サブレ、別製アイスクリームなどがあります。これらは2階の「かぎや茶寮」のメニューのようですが、配達してもらうこともできたようです。仮名書きで「かぎや」としてあるところを見ると、戦前の人たちにも「鎰」という漢字は難読だったのでしょう。

2018/05/16補記。湯川秀樹自伝『旅人』の「鎰屋」
湯川秀樹(1907−1981)の自伝『旅人』(初出は昭和32年の朝日新聞連載)に、子供のころの思い出として、「寺町の二条に鎰屋という菓子屋があった。当時としては、店構えも、置いてある菓子もモダンな店であった。その店から毎日のように御用聞きが来た。(中略)しかし、ぜいたくな 菓子は、余り食べなかった。塩豆、そら豆、餅菓子ではでっち羊かんにすはま。」とあります。湯川は1907年(明治40)生まれですから、仮に10歳前後とするならば大正6年ごろのことでしょう。モダンな洋菓子ばかりではなく、豆菓子や餅菓子などの和菓子も製造していたらしいことがわかります。なお、この当時の住いは寺町通二条の「鎰屋」から北へ1キロほど、寺町広小路の梨木神社の北でした。

2018/05/16補記。「京菓子司 かぎや延弘」と「御菓子司かぎや政秋」
ネットで検索すると、今出川寺町に「京菓子司 かぎや延弘」という店があり、“創業昭和2年(1927年)、元禄年間から続き小説(檸檬)にも出てくる「鎰屋延秋」から暖簾分け”とのこと。
さらに、百万遍には「御菓子司かぎや政秋」があってこちらは“1920年(大正9年)創業”とのこと。これで「KaGiYa」を含めて3店見つかりましたがまだ他にもあったのでしょうか。

posted by 三月山 at 22:20| Comment(0) | 雑、雑、雑、… | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする